はじめに
本記事は、2026年10月時点の情報で全面的に書き直しました。日本から自動車を海外へ送る方、海外から自動車やキャンピングカーで日本を旅行する方、日本の中古車の輸出を考えている方を対象にしています。
先に費用感をお伝えします。乗用車1台をコンテナでヨーロッパへ送る場合、日本側の費用は約100万円です。これに現地側の港湾費と通関費が加わり、恒久輸入なら関税と付加価値税もかかります。航空輸送は数百万円を超えます。
一時輸出入の制度(CPDカルネ、国際フェリーのC5014)と、日本の税関での実際の運用は、オートバイ輸出ガイドで詳しく説明しています。制度は二輪と四輪で共通ですので、海外ツーリングやキャンピングカーでの旅行を計画している方は、そちらも併せてお読みください。本記事は四輪に固有の点に絞っています。
輸送方法と費用の目安
自動車の国際輸送には、Ro-Ro船(自動車専用船)、コンテナ船、航空機の3つがあります。輸出先にRo-Ro船の定期航路があれば、中古車輸出ではRo-Ro船が最も一般的です。
| 区分 | Ro-Ro船 | コンテナ船 | 航空輸送 |
|---|---|---|---|
| 費用の目安 | 航路により大きく異なる。都度見積もり | ヨーロッパ向けで約100万円/台(日本側) | 数百万円〜 |
| 所要日数 | 1〜2か月 | 1〜2か月 | 数日〜1週間 |
| 積載条件 | 自走できること | 不動車も可。コンテナに収まる寸法であること | サイズ・重量の制限が厳しい |
| 特徴 | 1台から手軽で安価。車両が露出するため小傷・盗難のリスクあり | 封印されるため安全。1台だけでは割高 | 速いが非常に高額 |
Ro-Ro船
Ro-Ro(Roll-on/Roll-off)船は、車両が自走して乗り込む自動車専用船です。船内の車両甲板に駐車し、ベルトで固定して運びます。1台から積めるため個人でも使いやすく、費用もコンテナより安く済むことが多い方法です。
車両は船倉にそのまま置かれるため、コンテナと比べると小傷や車内からの盗難のリスクは高くなります。鍵を預けることになるので、貴重品は車内に残さないでください。自走できることが条件で、不動車は船会社への事前確認が必要です。
コンテナ船
40ftコンテナには乗用車3〜4台を積めます。日本で扉を封印し、輸入国で開封するまで第三者が車両に触れないため、高価な車両やコレクターズカーに向いています。1台だけなら20ftコンテナを使いますが、コンテナ1本分の費用がかかるので割高です。複数台をまとめれば1台あたりの費用は下がります。
コンテナ内での車両の固定(ラッシング)は専門業者に任せてください。費用は台数に応じて別途かかります。
コンテナに収まらない車両
40ftハイキューブコンテナの内寸は、高さ約2.7m、幅約2.35mです。キャンピングカー、ハイルーフのバン、大型SUVはこれに収まらないことがあります。その場合はフラットラックコンテナかRo-Ro船になります。フラットラックは費用が大きく上がり、Ro-Ro船は航路が限られます。背の高い車両を送る場合は、まず寸法を測り、どの方法が使えるかを確認してください。
航空輸送
数日で届きますが、費用は数百万円を超えます。モーターショーやレースへの出展車両、納期が最優先の高額車両など、特別な事情がある場合の選択肢です。燃料はほぼ空にする必要があり、大型車両は貨物機に積めないこともあります。
自動車・キャンピングカーでの一時輸出入
自分の車で日本を旅行する、または日本の車で海外を旅行する場合は、恒久輸出ではなく一時輸出入の手続きになります。使える制度はオートバイと同じで、CPDカルネと、国際フェリー限定の自動車一時輸出入申告書(C5014)の2つです。
制度の内容と、日本の税関での実際の運用はオートバイ輸出ガイドをお読みください。特に、C5014が往復フェリー以外では認められにくいこと、CPDカルネに備品の記載がないと輸出を止められることは、四輪にもそのまま当てはまります。ここでは四輪に固有の点だけを挙げます。
国際フェリーの車両条件
日本と韓国を結ぶ国際フェリーの一時輸出入には、オートバイと共通の条件(往復予約必須、同一航路のみ、装備以外の荷物は貨物扱い、帰国時のX線検査)に加えて、四輪では車両側の条件があります。航路によって次のような制限があります。
- 全長で運賃区分が分かれる(5m未満、6m未満など)。キャンピングカーは個別見積もり。
- 電気自動車は乗船不可。ガソリンも使えるハイブリッド車は可。
- 最低地上高9cm以下の車両は乗船不可。車高の低い車両は乗船当日に実測される。
- 入出国時に車内の荷物をすべて出して検査を受けることがある。キャンピングカーは生活用品が多くなりがちなので、事前にまとめておく。
航路と各社の連絡先は、オートバイ輸出ガイドの「国際フェリー」の節にまとめています。
キャンピングカーの備品とCPDカルネ
キャンピングカーには、冷蔵庫、調理器具、寝具、テーブルや椅子など、オートバイとは比べものにならない量の備品が載っています。CPDカルネでコンテナ輸出する際、これらが「カルネに記載のない物品」として問題になるリスクは、オートバイより高いと考えてください。発給機関に「Other particulars」欄への記載か、押印付きの備品リストを依頼しておくことが、いっそう重要になります。
車両に積んで持ち込む生活用品の多くは、そもそもカルネの対象ではなく、旅行者の身回品として別の制度で免税になっています。通達「『国際観光政策に関するOECD理事会の決定及び勧告』の取扱いについて」(蔵関第627号)は、非居住旅行者が携帯して輸入するテント・キャンプ用具一式、写真機、携帯用コンピューターなどを、原則として書面申告も担保もなしに免税としています。同じOECD規約は、旅行者のキャンピングカー・キャラバン・トレーラーの一時輸入を認めることも加盟国に求めています。
ただし、身回品として入った物と車両の備品として入った物の区別は、入国時に記録されません。これらを本人が携帯せず、車両に積んだままコンテナで輸出すると、輸出申告上はカルネの範囲外になり、別の貨物として申告する必要があります。通関業者が「カルネに記載がないから輸出できない」と言うのは、法的に輸出できないという意味ではなく、カルネ一本で処理できないということです。
この点については、参考になる国際的な議論もあります。国連欧州経済委員会(UNECE)内陸輸送委員会の作業部会は、1956年に採択した決議第1号「輸入関税および輸入税を免除した観光用キャラバン内容物の一時輸入」で、各国政府に対し、観光用キャラバンの内容物について完全かつ詳細な目録を求めず、冷蔵庫や据え置き型の無線機、通常と異なる家具や絨毯といった高価な備品だけを「Other Particulars」欄に申告させるよう勧告しています。根拠として挙げているのは、「自家用自動車の一時輸入に関する通関条約」第9条第3項(通常の備品は記載不要)と第4項(通常の備品と認められない附属品は税関が求めれば申告)です。
この決議の各国による受諾状況は記録されておらず、法的拘束力もありません(文書番号 TRANS/WP.30/51。2008年の作業部会文書 ECE/TRANS/WP.30/2008/16 に収録)。ただし、「車両の通常の備品は書かなくてよく、高価なものだけ書けばよい」という考え方は条約の条文に沿っており、日本の施行令第2条(1万円以上の附属品のみ記載)とも方向が一致しています。CPDカルネの備品記載で税関や通関業者と見解が分かれたときに、参照する価値のある資料です。
日本からキャンピングカーで海外へ行く場合
日本登録のキャンピングカーで海外を旅行する場合は、JAFでCPDカルネを取得し、コンテナ(収まる場合)、フラットラック、またはRo-Ro船で送ります。費用は乗用車より高くなります。国際フェリーで韓国へ渡る場合は、各社に車両の寸法を伝えて乗船可否と運賃を確認してください。
電気自動車・ハイブリッド車の船積み
電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)は大容量のリチウムイオン電池を積んでいるため、船会社から追加の書類を求められます。一般に必要なのは、電池のSDS(安全データシート)と危険物申告書(DGD)です。船会社によっては、第三者のサーベイ会社による確認も求めます。これらはメーカーの日本法人や輸入元から入手することになり、時間がかかります。EV・PHEVを送る場合は、通常より早めに準備を始めてください。
国際フェリーについては前述のとおり、電気自動車を乗せられない航路があります。
恒久輸出の手続きと必要書類(日本側)
必要書類
- インボイス:車名、車台番号、年式、排気量、燃料種別を記載した売買の明細
- パッキングリスト:数量、寸法、重量
- 輸出抹消仮登録証明書(登録車)または輸出予定届出証明書(一時抹消済みの車両)。運輸支局または軽自動車検査協会で交付。有効期限は6か月。日英併記版を取得できるので、輸入国で英文を求められる場合はそちらを用意する
- 譲渡証明書
- 船積前検査証明書:輸入国が求める場合のみ。走行距離、放射線、害虫など、検査内容は国によって異なる
手続きの流れ
- 売買契約と代金受領:海外のバイヤーと支払条件を決めます。前払いが基本です。
- 輸出抹消仮登録:運輸支局または軽自動車検査協会で証明書の交付を受けます。
- 船腹の予約:フォワーダーを通じてRo-Ro船またはコンテナを予約し、車両を港のヤードに搬入します。
- 車両の清掃と荷物の確認:泥や植物の種子を落とします。オーストラリア・ニュージーランド向けは、9月から4月に出荷する貨物にクサギカメムシ対策の燻蒸または熱処理が義務付けられています。車内にはスペアタイヤと工具以外の荷物を入れないでください。申告していない物品が積まれていると、車両の輸出許可が下りないことがあります。
- 税関への輸出申告と許可:書類と現物の照合を受け、輸出許可書が交付されます。この時点で国土交通省に通知され、日本側の登録は輸出扱いになります。
- 船積みとB/L発行:船会社が船荷証券(B/L)を発行します。原本をバイヤーに送り、バイヤーは到着港でB/Lと引き換えに車両を受け取ります。
- リサイクル料金の返還申請:預託済みのリサイクル料金は、輸出後に自動車リサイクル促進センター(JARC)へ申請すれば返還されます。輸出抹消証明書、輸出許可書、B/Lの写しが必要です。
輸入国側の規制・通関・登録
輸入規制の確認
各国には中古車の輸入に独自の規制があります。代表的なものを挙げます。
- アメリカの25年ルール:製造から25年以上経過した車両は、安全・排ガス基準の適合を免除して輸入できます。25年未満の日本仕様車は、原則として輸入できません。
- 右ハンドルの可否:国によっては左ハンドルへの改造が必要です。
- 車齢・走行距離の制限:ニュージーランドなど。タイのように中古車の輸入を原則禁止している国もあります。
- 排ガス・衝突安全基準:ヨーロッパでは適合証明が必要です。
関税と税金
関税率は国と車種で異なります。アメリカは乗用車2.5%、トラック25%です。ヨーロッパは関税約10%に20%前後のVATが加わります。東南アジアには、排気量に応じて非常に高い関税・物品税を課す国があります。輸入許可証、排ガス・放射線検査の証明、所有権証明の公証など、追加書類を求められることもあるので、現地の通関業者に事前に確認してください。
現地での登録
通関後、公道を走るには現地での登録が必要です。安全検査や排ガス試験のほか、ヘッドライトの光軸調整、スピードメーターのマイル表示化などを求められることがあります。日本の輸出抹消証明書は現地登録の所有権証明として使われることが多いので、原本を紛失しないでください。
現地での受け取り方法
- 港で直接引き取り:最も一般的です。B/L原本、身分証明書、通関書類を提示して保税ヤードから引き取ります。到着後のフリータイムを過ぎると保管料が日割りでかかります。港から自走する場合は仮ナンバーが必要になることがあります。
- ドア・ツー・ドア:港から指定場所まで配送するサービスです。現地の陸送費用が加わります。
どちらの場合も、受け取り時にその場で車両の状態を確認し、損傷があれば写真で記録してください。保険請求に必要です。なお、中古車両の海上保険では外装の傷や塗装の剥がれは補償されません。補償されるのは、船舶事故や全損のような大きな損害です。
JDM車の海外需要と輸出ビジネス
JDM(Japanese Domestic Market)車とは、日本国内向けに製造・販売されたモデルのことです。1990年代のスポーツカー、軽トラック、商用バンなど、日本独自の仕様やモデルは海外の愛好家から強い支持を受けています。アメリカでは25年ルールの対象になった車が次々と合法的に輸入できるようになり、スカイラインGT-R、スープラ、シルビア、RX-7などが高値で取引されています。日本では年式が古くなると価値が下がる車でも、海外では右ハンドルの珍しさ、日本製の信頼性、チューニング文化への憧れから高く評価されることがあります。
新興国では、日本の大衆車や商用車が「安くて壊れにくい中古車」として大量に輸出されています。先進国でも、25年ルール対象車や限定モデルのネオクラシック需要は根強いものがあります。
ビジネスとして行う場合の注意点を挙げます。
- 輸入国の法規制を守る。保安基準を満たさない車両や違法改造車は輸出しない。
- 盗難車の不正輸出が問題になっており、税関のチェックは厳しくなっている。車台番号と所有権を輸出前に確認する。
- 相場は一時的なブームで乱高下する。現地の需要を見極め、リスクを管理する。
- 決済は前払いが基本。海外バイヤーとの信用取引には、エスクローの利用や現地パートナーとの連携が必要になる。
よくある質問(FAQ)
Q1:キャンピングカーで日本を旅行したいです。何が必要ですか。
A:CPDカルネを取得し、JAFの認証を受けて一時輸入します。車両の寸法によってはコンテナに収まらず、フラットラックかRo-Ro船になります。備品が多いので、カルネの「Other particulars」欄か押印付き別紙に備品を記載してもらってください。詳しくはオートバイ輸出ガイドの「一時輸出入の制度と実運用」をお読みください。
Q2:Ro-Ro船とコンテナ、どちらを選ぶべきですか。
A:輸出先にRo-Ro航路があり、車両が自走でき、小傷のリスクを許容できるならRo-Ro船です。高額車両、不動車、Ro-Ro航路のない地域、複数台をまとめて送る場合はコンテナです。
Q3:電気自動車は送れますか。
A:送れます。ただし、リチウムイオン電池のSDSと危険物申告書が必要で、船会社によってはサーベイも求められます。準備に時間がかかるので早めにご相談ください。国際フェリーには電気自動車を乗せられない航路があります。
Q4:安い車なら現地で買った方が得ですか。
A:多くの場合、そうです。ヨーロッパ向けコンテナで日本側約100万円、さらに現地側の費用と税金がかかります。車両価格がこれを下回るなら、現地で購入する方が安く済みます。例外は、現地で手に入らないJDM車や、思い入れのある愛車を持っていく場合です。
Q5:見積もりは無料ですか。
A:見積もりは有料です。概算は本記事の金額を目安にしてください。個別の見積もりには、フォワーダー、通関業者、船会社にそれぞれ費用を確認する必要があります。ご依頼いただいた場合は、見積もり費用を受注時の費用から差し引きます。
参照した条約・法令・資料
- 自家用自動車の一時輸入に関する通関条約(1954年、ニューヨーク)
- 自家用自動車の一時輸入に関する通関条約の実施に伴う関税法等の特例に関する法律
- 同法施行令
- 国際フェリーを利用して輸出入する自家用自動車の通関手続について(蔵関第849号)
- 「国際観光政策に関するOECD理事会の決定及び勧告」の取扱いについて(蔵関第627号)
- 自動車カルネのご案内(JAF)
- 「輸入関税および輸入税を免除した観光用キャラバン内容物の一時輸入」
UNECE 内陸輸送委員会 輸送に影響を及ぼす税関問題に関する作業部会(WP.30)決議第1号(TRANS/WP.30/51)。ECE/TRANS/WP.30/2008/16 付属書に収録 - ジェトロ:中古自動車の輸出手続き
当社にご依頼いただける内容
当社は横浜を拠点に、自動車・オートバイの国際輸送手配を行っています。輸送そのものは提携するフォワーダー・通関業者・梱包業者が行い、当社は全体の手配と書類の取りまとめを担当します。
- Ro-Ro船・コンテナ・航空輸送の手配
- CPDカルネ・C5014での輸出通関(キャンピングカーを含む)
- 海外からの一時輸入と、日本国内での港からの引き取り・陸送
- 恒久輸出の書類作成(輸出抹消、インボイス、リサイクル料金返還申請)
- 海外バイヤー向けの業者オークション仕入れ代行
- 海上保険の手配
お問い合わせの際は、車種と寸法、出発地と目的地、希望時期、一時輸出入か恒久輸出か、CPDカルネの有無をお知らせください。個別の見積もりは有料です。
→ 手配の流れと料金の考え方は 車両コンシェルジュ にまとめています。バイクの場合は 国際輸送(バイクの輸出入) もご覧ください。
略語・用語一覧
| 略語 | 語句 | 意味 |
|---|---|---|
| Ro-Ro | Roll-on/Roll-off | 自走で積み下ろしする自動車専用船 |
| HC | High Cube | 標準より約30cm高いコンテナ |
| フラットラック | Flat Rack Container | 天井と側壁のないコンテナ。大型貨物用 |
| B/L | Bill of Lading | 船荷証券 |
| CPD | Carnet de Passages en Douane | 自家用自動車通関手帳。旅行者の車両の一時輸入用カルネ |
| C5014 | 自動車一時輸出入申告書(税関様式C第5014号) | 国際フェリーで往来する自家用自動車の免税一時輸出入の申告書 |
| JAF | 日本自動車連盟 | 日本のCPDカルネ発給・認証機関 |
| OECD | Organisation for Economic Co-operation and Development | 経済協力開発機構 |
| UNECE | United Nations Economic Commission for Europe | 国連欧州経済委員会 |
| SDS | Safety Data Sheet | 安全データシート。電池などの危険物の性状を記載 |
| DGD | Dangerous Goods Declaration | 危険物申告書 |
| JDM | Japanese Domestic Market | 日本国内市場向けモデル |
| JARC | 自動車リサイクル促進センター | リサイクル料金の預託・返還を扱う機関 |
| VAT | Value Added Tax | 付加価値税 |
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