🇷🇺🇰🇷🇯🇵 ユーラシア横断ライダーのための「極東国境越え」完全ガイド
ウラジオストク発・博多行き:カルネ不要の「C5014」ルート
「ユーラシア大陸を横断して日本へ帰りたい(あるいは行きたい)」
そう考えるライダーにとって、最後の難関が極東アジアの国境越えです。特に中国の壁、韓国の高速道路事情、そして日本の一時輸入手続きは複雑怪奇です。
しかし、朗報があります。
日本への入国に、高額なデポジットが必要な「カルネ・ド・パサージュ(CPD)」は必ずしも必要ありません。日本の税関が用意している「C5014(一時輸入申告書)」という書類を使えば、より低コストに、かつJAFに行く手間を省いて入国することが可能です。
本記事では、2025年最新の物流事情に基づき、「ロシア・ウラジオストク → 韓国・東海/釜山 → 日本・博多」というゴールデン・ルートの詳細を解説します。
🗺️ ルートの全体像
中国から韓国へのフェリーは、現在バイクの自走乗り込み(Ro-Ro)を認めていません。そのため、大陸から日本へ渡るには、以下のルートが唯一の現実的な選択肢となります。
- 🇷🇺 ロシア脱出: ウラジオストク港からフェリーで韓国へ。
- 🇰🇷 韓国縦断: 東海(Donghae)港から釜山(Busan)港まで約300kmを自走。
- 🇯🇵 日本入国: 釜山港からフェリーで福岡・博多港へ(ここでC5014を使用)。
🛳️ Step 1: ウラジオストクから韓国へ脱出する
かつて日本(境港)へ直行していたDBSクルーズは廃止されましたが、現在は韓国籍の船がこの航路をつないでいます。
1. 利用するフェリー
- 船名: Eastern Dream(運航:Duwon Shipping)
- 航路: ウラジオストク(Vladivostok) ⇔ 東海(Donghae)
- スケジュール: 週1便(通常水曜日発 → 翌木曜日着)
- 費用目安:
- 旅客運賃: 約300〜400 USD
- バイク輸送料: 約700〜1,000 USD(排気量や梱包の要否による)
2. ここが重要:フィクサー(通関業者)の手配
ウラジオストク港での車両通関(一時輸出)は、ロシア語での複雑な書類作成が必要で、個人で行うのはほぼ不可能です。必ず地元のエージェントを雇いましょう。
- 推奨エージェント: Links LtdのYuri Melnikov氏
- 多くのライダーがお世話になっている伝説的なフィクサーです。彼に連絡すれば、税関手続きから船積みまで全てアレンジしてくれます。
- ウェブサイト: Links Ltd
🏍️ Step 2: 韓国(東海~釜山)を走る
韓国に上陸したら、次は日本行きの船が出る釜山(Busan)まで移動します。
1. 韓国の入国通関(Temporary Import)
韓国もカルネ加盟国ですが、実務上はカルネを使わず、税関で「保証金(Guarantee)」を支払う一時輸入方式が一般的です。
- 保証料: 車両価格に応じた掛け捨ての保証料(約150,000〜200,000ウォン前後)を支払います。
- 強制保険: 港で1ヶ月加入します(約184,000ウォン)。
- サポート: ウラジオストクのYuri氏が、韓国側の通関エージェント(Mr. YounやWendy Choi氏など)を紹介してくれます。事前に連絡を取り合っておきましょう。
2. 【最重要】韓国の交通ルール:高速道路は走行禁止!
韓国では、すべての二輪車(排気量を問わず)の高速道路走行が法律で禁止されています。
- ルート: 東海から釜山までは、海沿いの国道7号線を利用します。
- 所要時間: 距離は約300km強ですが、信号や市街地があるため、休憩込みで6〜8時間かかります。フェリーの乗り継ぎがある場合は、余裕を持って前日に釜山入りすることをお勧めします。
🚢 Step 3: 釜山から日本へ(フェリーの選択)
釜山までたどり着けば、日本は目の前です。日本行きフェリーは2つの主要な選択肢があり、目的地に合わせて自由に選ぶことができます。
選択肢1:カメリアライン(博多行き)
九州からツーリングをスタートしたい場合はこちらが便利です。
- 航路: 釜山港 ⇔ 福岡・博多港
- スケジュール: 毎日運航(昼行便または夜行便)
- 特徴: 福岡市街地へのアクセスが抜群に良く、都市部での滞在や補給が容易です。
選択肢2:関釜フェリー(下関行き)
本州へ直接上陸し、中国地方や関西方面へ進むならこちらが便利です。
- 航路: 釜山港 ⇔ 山口・下関港
- スケジュール: 毎日運航(夜行便)
- 特徴: 歴史ある航路です。下関ICからすぐに本州の道路網に接続できます。
🇯🇵 Step 4: 日本入国とC5014手続き(博多港)
博多港に到着したら、いよいよ入国です。カルネ認証の時のようにJAF(日本自動車連盟)に行く必要はありません。すべて港の中で完結します。
1. C5014(自動車一時輸出入申告書)とは?
- 正式名称: 税関様式C-5014「自動車一時輸出入申告書」
- メリット: カルネのような高額なデポジットが不要。手数料も原則無料です。
- 有効期間: 通常、最長1年間。
2. 手続きフロー
- 入国審査: パスポートコントロールを通過。
- 税関検査(Customs): 車両置き場へ行き、検査官に「C5014フォームを使いたい」と伝えます。
- 書類作成: 税関が用意してくれるC5014フォームに必要事項(住所、車両情報、出国予定日など)を記入して提出します。
- 許可証の受領: 審査が通ると、許可印が押されたC5014の控えが返却されます。輸出の際に必要ですの大切に保管してください。
3. 自賠責保険(CALI)の加入
日本の公道を走るには、自賠責保険(Compulsory Automobile Liability Insurance)への加入が義務です。
- 場所: 博多港国際ターミナル内の代理店や、近くの損害保険会社で加入できます。
- 費用: 1ヶ月で約5,000円〜7,000円程度(期間による)。
⚠️ なぜ中国ルートはダメなのか?
「中国からフェリーで韓国へ行けないの?」という質問をよく受けますが、現状はNoです。
- 理由: 青島(Qingdao)や連雲港(Lianyungang)からのフェリーは、旅客の自転車は載せますが、バイクの自走乗り込み(Ro-Ro)を認めていません。
- 例外: バイクを木箱に梱包し、貨物(Freight)として業者に依頼すれば可能ですが、費用が数千ドルに跳ね上がり、手続きも非常に煩雑です。
💰 概算コスト(片道・1名1台)
| 項目 | 概算費用 | 備考 |
| ロシア出国 | 約1,100〜1,400 USD | フェリー運賃 + 通関代行費 |
| 韓国通過 | 約300〜400 USD | 保証料 + 保険 + 燃料・宿泊 |
| 日韓フェリー | 約30,000〜50,000円 | 旅客 + バイク輸送料 |
| 日本入国 | 約5,000〜10,000円 | 自賠責保険(C5014は無料) |
| 合計 | 約20万〜25万円 | 為替・燃料費により変動 |
✅ まとめ
- ルート: ロシア・ウラジオストク → 韓国・東海 → 釜山 → 日本・博多。
- 書類: カルネは不要。日本ではC5014で一時輸入。
- 走行: 韓国では高速道路に乗らないこと。
このルートなら、JAF支部へわざわざ出向く必要もなく、博多港に降り立ったその日から、すぐに日本のツーリングをスタートできます。
Safe travels!
