🇷🇺🇰🇷🇯🇵 ユーラシア横断ライダーのための「極東国境越え」完全ガイド
ウラジオストク発・日本行き:4つの入り口と、C5014が使える条件
「ユーラシア大陸を横断して日本へ帰りたい(あるいは行きたい)」
そう考えるライダーにとって、最後の難関が極東アジアの国境越えです。中国の壁、韓国の高速道路事情、そして日本の一時輸入手続き。本記事では、ウラジオストクから日本へ渡る3つのルートと、日本側の通関で何が起きるかを、当社が実際の案件で確認した事実に基づいて解説します。
先に結論を書きます。日本にはCPDカルネなしで一時輸入できる「C5014」という制度がありますが、これは国際フェリーで往復する車両のための制度です。フェリーで日本に入り、別の港からコンテナや航空便で出る予定なら、CPDカルネを取得してから来てください。この点を「カルネ不要」と書いている記事がインターネット上にありますが、2026年10月時点の運用はそうなっていません。
🗺️ ルートの全体像:日本への入り口は4つある
中国から韓国へのフェリーは、現在バイクの自走乗り込みを認めていません。そのため、大陸から日本へ渡るには、まずウラジオストクから韓国・トンヘへ渡るのが出発点になります。
そこから先の分岐は4通りです。

🟦 ルートA:トンへ → 境港(Eastern Dreamで直行)
ウラジオストクから乗ってきたEastern Dreamがそのまま境港まで運航しているため、韓国国内を自走せずに日本へ入れます。最短・最小手間のルートです。
🟩 ルートB:トンへ →(自走約300km)→ プサン → 博多
韓国を縦断してから、カメリアラインで福岡へ。韓国を走ること自体を旅程に組み込みたい人、九州からツーリングを始めたい人向けです。
🟨 ルートC:トンへ →(自走約300km)→ プサン → 下関
同じく韓国縦断後、関釜フェリーで本州へ直接上陸。中国地方・関西方面へそのまま進みたい人向けです。
🟪 ルートD:トンへ →(自走約300km)→ プサン → 大阪
同じく韓国縦断後、パンスタークルーズで大阪へ。関西からツーリングを始めたい人、本州中央部へ直接入りたい人向けです。
大きな違いは「韓国に上陸するかどうか」です。ルートAで韓国に車両を降ろさずスルーする場合、韓国側の一時輸入通関・保証料・強制保険と、高速道路を使えない300kmの自走が丸ごと不要になります。
🛳️ Step 1: ウラジオストクからEastern Dreamに乗る
日露間のフェリー航路は、戦前の敦賀〜ウラジオストク航路や樺太を結んだ稚泊連絡船に始まります。ソ連崩壊後は富山・伏木港とウラジオストクを結ぶ貨客船「ルーシ」が中古車輸出を背景に運航されたものの、関税引き上げ等により2009年に休止しました。同年に韓国を経由する3カ国航路としてDBSクルーズフェリーが開設した境港〜トンヘ〜ウラジオストク航路は、ドゥウォン商船への移管を経て、運航が続けられています。

1. 利用するフェリー
- 船名: Eastern Dream(運航:ドゥウォン商船、日本側窓口:イースタンクルーズ&フェリー)
- 航路: ウラジオストク ⇔ トンヘ ⇔ 境港 の三角航路
- 公表料金と見積もり対象(2026年10月確認):
- 旅客運賃
- バイク輸送料・ロシア側通関・港湾費:個別見積もり。Duwon公式案内では、車両運賃と一時輸出入の条件は担当窓口への照会となっています。車両同伴者は旅客券も担当者経由で予約してください。
2. 運航スケジュール(曜日固定)
1隻で周回しているため、曜日が固定されています。この曜日を軸に旅程を組むのが極東越えの基本です。
| 出発地 | 目的地 | 曜日 | 乗船手続き | 出航 |
|---|---|---|---|---|
| ウラジオストク | トンへ | 水曜日 | 09:30〜12:00 | 13:00 |
| トンへ | 境港 | 木曜日 | 16:00〜17:00 | 17:30 |
| 境港 | トンへ | 土曜日 | 16:00〜17:30 | 18:00 |
| トンへ | ウラジオストク | 月曜日 | 12:00〜14:00 | 15:00 |
注目すべきは水曜と木曜の連続性です。ウラジオストクを水曜に出た船は木曜にトンへへ入り、その同じ木曜の夕方にトンへを出て境港へ向かいます。スケジュールは変わることがあるので、予約時に必ず確認してください。
3. ウラジオストク側の通関エージェント
ウラジオストク港での車両通関(一時輸出)は、ロシア語での書類作成が必要で、個人で行うのはほぼ不可能です。必ず現地のエージェントを使ってください。
- 推奨エージェント: Links Ltd の Yuri Melnikov 氏。多くのライダーが利用しており、税関手続きから船積みまで一通り手配してくれます。
- 当社はYuri氏と直接の取引関係があります。日本側の手配と合わせて当社にご依頼いただければ、ウラジオストク側の手配も当社経由でまとめて進められます。
🟦 ルートA:トンへから境港へ直行する
木曜17:30にトンへを出港し、翌日には境港に到着します。
メリット
- 韓国の一時輸入通関が不要(車両を降ろさない場合)。保証料・強制保険の費用が省けます。
- 高速道路禁止の韓国を300km自走する必要がない。船旅の疲れが残る中での長距離移動を回避できます。
- 乗り継ぎ待ちの宿泊費・日数が不要。プサン経由だと最短でも韓国で1〜2泊が必要です。
- 上陸後すぐに山陰海岸、大山、中国地方の峠へアクセスできます。
デメリット・注意点
- 週1便しかないため、曜日を外すと1週間待ちになります。
- 境港は地方港のため、博多に比べて交通アクセスや補給の選択肢が限られます。
- 境港税関支署は、フェリーで往復しない車両のC5014一時輸入を認めていません。日本からコンテナや航空便で出国する予定なら、CPDカルネが必須です(後述)。
🏍️ ルートB・C・D:韓国(トンヘ〜プサン)を走る
韓国に上陸して縦断し、プサンから日本へ渡る場合の手続きです。
1. 韓国の入国通関(Temporary Import)
韓国ではCPDカルネが使えず、税関で保証料を支払う一時輸入方式が一般的です。
- 保証団体手数料等:2026年のトンヘ入国時に適用される料金は要見積もり。排気量・登録国・通関方式を示し、トンヘ側の担当者に確認してください。カメリアラインの公開表には二輪の保証料120,000/160,000/240,000ウォンが掲載されていますが、2023年4月の参考値であり、トンヘでの現在料金には流用できません(公開表と条件)。
- 強制保険:保険期間・年齢・車種等で変わるため、渡航前に見積もりを取得してください。「1か月184,000ウォン」を一律の最新料金としては扱えません。カメリアラインの公開保険表も2023年7月の参考値で、実際の料金は個別算出と案内されています(保険料の案内)。
- サポート: ウラジオストクのYuri氏が、韓国側の通関エージェントを紹介してくれます。事前に連絡を取っておいてください。
2. 韓国の交通ルール:高速道路は走行禁止
韓国では、すべての二輪車(排気量を問わず)の高速道路走行が法律で禁止されています。
- ルート: トンヘからプサンまでは、海沿いの国道7号線を使います。
- 所要時間: 距離は約300km強ですが、信号や市街地があるため、休憩込みで6〜8時間かかります。フェリーの乗り継ぎがある場合は、前日にプサン入りしておくことをお勧めします。
免許の注意:韓国と日本は1949年ジュネーブ条約の締約国で、1968年ウィーン条約のみに加入している国(スイスなど)の国際免許は有効ではありません。日本はスイスの免許証に日本語翻訳文を添えれば運転を認めていますが、韓国にはこの措置がなく、スイスの免許では韓国を走れません。該当する方はルートA(境港直行)を選んでください。
3. プサンから日本へ:3つの選択肢
ルートB:カメリアライン(博多行き)
- 航路: プサン港 ⇔ 福岡・博多港(カメリアライン)
- スケジュール: 毎日運航(昼行便または夜行便)
- 特徴: 福岡市街地へのアクセスが良く、都市部での滞在や補給が容易です。九州からツーリングを始めたい場合に向いています。
- 公表料金:バイク80〜299ccは片道30,000円・往復40,000円、300cc以上は片道35,000円・往復50,000円。カルネ通関は片道35,000円・往復50,000円の欄があります。通関手数料は1台5,000円。プサン発の旅客諸費用として燃油料14,000ウォン、港湾税6,000ウォン、観光基金1,000ウォンが別途掲載されています。外国登録車の片道受託、旅客運賃の含まれる範囲、通関費の収受範囲は予約時に確認してください(車両料金/2026年10月改定の旅客料金・諸費用)。
ルートC:関釜フェリー(下関行き)
- 航路: プサン港 ⇔ 山口・下関港(関釜フェリー)
- スケジュール: 毎日運航(夜行便)
- 特徴: 本州へ直接上陸でき、中国地方・関西方面へそのまま進めます。
- 公表料金:125cc以上のバイクは2等室30,000円、1等室34,000円、デラックス41,000円、スイート52,000円(運転手1名の旅客運賃を含む片道額)。ただし車両航送は往復利用が条件です。日本側の公表通関手数料は1台6,000円で、燃油料・施設使用料等は別です。日本発の利用条件で掲載された料金を、外国登録車のプサン発片道にそのまま適用できるとは限りません(公式車両案内)。
ルートD:パンスタークルーズ(大阪行き)
- 航路: プサン港 ⇔ 大阪港(パンスタークルーズ)
- スケジュール: 週3便程度(夜行便)
- 特徴・公表料金:関西に直接入れます。現在の案内船はパンスターミラクル号です。公式の二輪一時輸出入プランは、インサイド4人室で往復840,000ウォン。食事・書類・日本側通関・保険等は別途です。これは片道料金ではなく、他国登録の旅行者の車両へそのまま適用できるとは限りません。車両の予約は原則乗船1か月前、書類提出は2週間前まで。外国登録車の片道受託・総額は照会してください(公式車両プラン)。
博多・下関は毎日運航なので、週1便のEastern Dreamと違って日程の自由度が高いのがルートB・Cの利点です。大阪は便数が少ないので、予約を早めに確定してください。
🇯🇵 Step 3: 日本入国の手続き
日本側で使える一時輸入の制度は2つです。どちらを使うかは、日本からどうやって出るかで決まります。
1. 往復フェリーならC5014
入った港から同じフェリーで出る場合は、税関様式C第5014号「自動車一時輸出入申告書」で免税の一時輸入ができます。CPDカルネは不要で、JAFに行く必要もなく、手続きは港の中で完結します。税関への手数料はかかりません(フェリー会社の代理通関手数料は別です)。
- 入国審査: パスポートコントロールを通過。
- 税関検査: 車両置き場でC5014を2通作成し、税関に申告します。
- 許可書の受領: 許可されると1通が輸入許可書として返却されます。再輸出時に必要なので大切に保管してください。
2. 片道ならCPDカルネ
フェリーで入って、横浜などからコンテナや航空便で出る場合は、CPDカルネが必要です。往復乗船でない車両には、税関支署がCPDカルネを求めます。フェリー会社の予約条件も往復が前提で、片道のC5014での予約は受け付けてもらえないことがあります。フェリー会社は税関支署の指導に従っているだけで、交渉の余地はありません。
運用は港によって異なります。境港税関支署では、フェリー以外の手段で再輸出する前提でのC5014一時輸入は認められていません。他の港では、C5014で入国した車両を正規の輸出申告でコンテナ輸出できた実績が当社にありますが、個別案件での判断であり、常に認められるとは限りません。
CPDカルネは自国の自動車連盟で取得し、日本ではJAFの認証(事前予約制)を受けて税関に申告します。発給には1か月程度かかるので、出発前に取得しておいてください。装備品の記載についてもトラブルがあるので、詳しくはオートバイ輸出ガイドの「一時輸出入の制度と実運用」をお読みください。
3. 自賠責保険(CALI)の加入
日本の公道を走るには、自賠責保険(Compulsory Automobile Liability Insurance)への加入が義務です。
- 費用:小型二輪(250cc超)の通常の自賠責保険料は、1か月5,360円(2026年10月31日以前始期)、1か月5,920円(2026年11月1日以降始期)。沖縄県・離島を除く地域の基準料率です。軽二輪(125cc超〜250cc以下)は、公開表の12か月料金がそれぞれ7,100円/7,800円です。
- 国際ターミナル内の代理店や、近くの損害保険会社で加入できます。
- 当社は自賠責共済の代理所として、海外からの旅行者の加入相談を受けています。到着前にご相談ください。
⚠️ なぜ中国ルートはダメなのか?
「中国からフェリーで韓国へ行けないの?」という質問をよく受けますが、現状はNoです。
- 理由: 青島(Qingdao)や連雲港(Lianyungang)からのフェリーは、旅客の自転車は載せますが、バイクの自走乗り込みを認めていません。
- 例外: バイクを木枠に梱包し、貨物として業者に依頼すれば可能ですが、輸送・梱包・通関費は個別見積もりとなり、手続きも煩雑です。
💰 4ルート比較(片道・1名1台)
| 項目 | A:境港 | B:博多 | C:下関 | D:大阪 |
|---|---|---|---|---|
| ロシア側の旅客・バイク・通関 | 境港までの通し総額は要見積もり | トンヘまでの総額は要見積もり。旅客通常片道380 USDを参考に、燃油63 USD・ターミナル27 USD、車両・通関費を別計上 | Bと同じ | Bと同じ |
| 日本行きフェリーの公表額 | 通し総額は要見積もり。トンヘ→境港のみの通常旅客運賃は173 USD、燃油33 USD・ターミナル2 USD(車両別) | 二輪片道30,000円(80〜299cc)/35,000円(300cc以上)。カルネ通関35,000円。通関・燃油等別 | 2等室30,000円/1等室34,000円(125cc以上、運転手1名込みの片道額)。往復利用条件・通関等別 | 公式二輪プランは往復840,000ウォン〜。片道利用・他国登録車は要照会、諸費用別 |
| 運航頻度 | 週1便(木曜発) | 毎日 | 毎日 | 週3便程度 |
※表の数字は各社が公表する料金の参考値であり、外国登録バイクの片道旅行の確定見積もりではありません。各社の料金表は出発地・登録国・往復条件・含まれる旅客運賃が異なるため、単純合算はできません。ロシア側通関・港湾費、韓国側保証・保険、宿泊、燃油料、日本側通関・保険等を含む見積もりを取得してください。旧記載の「合計20万〜25万円」は最新の根拠を確認できないため削除しました。日本からのコンテナ・航空輸送費は別です。
✅ まとめ
- 入り口は4つ: 境港(Eastern Dream直行)/博多(カメリアライン)/下関(関釜フェリー)/大阪(パンスタークルーズ)。
- 韓国での通関と自走を減らすなら境港。車両を韓国で一時輸入せず通過できる場合は、韓国通関と300kmの自走を回避できます。費用の優劣は見積もりで比較してください。ただし週1便。
- 日程の確実性を取るならプサン経由。博多・下関は毎日運航なので予定が崩れにくい。関西から始めたいなら大阪。
- 書類: 同じフェリーで往復するならC5014。日本からコンテナや航空便で出るならCPDカルネ。出発前に取得しておく。
- 走行: 韓国を走る場合、二輪は高速道路に乗れない。国道7号線を使う。
ウラジオストク側のエージェント手配、日本からの車両輸出、自賠責保険の相談は、当社でまとめて受けられます。
→ 日本からの車両輸出の流れと費用の目安は 国際輸送(バイクの輸出入) にまとめています。
Safe travels!
