はじめに
本記事では2025年時点の最新コスト相場、手続き、注意点をまとめました。最近では諸事情のためにバイクの通関が非常に厳しくなっているために、十分な時間と費用の余裕を持つことが必要です。
日本をツーリングしていて海外にバイクを送る際に役立つ内容も含まれています。
輸送方法の比較チャート
区分 | 海上輸送(LCL混載) | 海上輸送(FCL20ft) | Ro-Ro船 | 航空輸送 |
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費用感 | 1台 ¥20万–(近距離アジア) / ¥30万–(欧米) | ¥50万–/本船(8–10台積載で1台あたり¥6万–) | ¥12万-(東南アジア航路) | ¥50万– |
所要日数 | 3–6週(航路+通関) | 3–6週 | 2–5週 | 3–7日 |
メリット | 小口でも可/コスト低 | 大量輸送で単価激安 | 梱包不要・走行可 | 圧倒的に速い |
デメリット | 港湾費が高め | 1台だけだと割高 | 航路が限定的 | コスト高・危険物規制 |
備考:
- 近年のバイクの輸送料金は大きく値上がりしています。輸出入の可否を含めた都度の見積もりが必要です。
- Ro-Ro(Roll-on/Roll-off)輸送はフェリー型の専用自動車船で、コンテナ梱包が不要でコストを抑えやすいですが、一般的には韓国、中国、ロシア経路しかありません。
- コンテナ輸送では1台のみの発送時に割高になりがちで、梱包・通関・港湾費用などを含めた総額では25万円以上を見込んでおくと安心。
- 航空便はスピード重視だがコスト高。
◆ 総額シミュレーション(例:横浜→ドイツ・ハンブルク / LCL 1台)
内訳 | 金額(円) |
海上運賃 | 250,000 |
日本側梱包・港湾費 | 100,000 |
日本側通関(代行) | 40,000 |
海上保険 | 10,000 |
日本側計 | 約¥400,000 |
ハンブルク側D/O・港湾費 | 40,000 |
ドイツVAT(19%) | 約 230,000 |
ドイツ関税(6%) | 約 72,000 |
内陸配送(ハンブルク→ベルリン) | 30,000 |
ドイツ側計 | 約¥372,000 |
想定総額 | 約¥772,000 |
一時輸出を利用した海外ツーリング
恒久輸出と異なり、一定期間内に車両を日本へ再持込む前提の “一時通関” です。自家用自動車通関手帳(カルネ)を取得する必要があります。
- 自動車通関手帳(カルネ : Carnet de Passages en Douane)とは、「自家用自動車の一時輸入に関する通関条約」に基づく通関書類。
- 条約締結国間を旅行する場合、カルネの担保のもとで、都度通関書類を作成することなく、免税扱いにより輸出入通関手続が簡単に速くできます。
- 日本では JAF(日本自動車連盟) が発給窓口。
- 有効期間: 1 年(差し替え申請可能)。
- 国境通過ごとに税関スタンプを押印し、再入国時に完全消化されていれば保証金が返還されます。
◆ カルネ vs 恒久輸出(比較)
項目 | カルネ(CPD) | 恒久輸出 |
費用 | 申請手数料+保証金(返金) | 輸送費+関税・税金 |
通関 | 一時通関で免税 | 輸入国で課税・登録 |
有効期間 | 1 年(差し替え申請可能) | 制限なし |
登録国 | 日本ナンバーのまま走行可(国による) | 輸入国で再登録 |
適したケース | 世界ツーリング/ラリー参戦 | 移住・販売・現地常駐 |
一時輸入を利用した日本のツーリング
自動車一時輸出入申告書(C5014)を利用する場合
日本と外国を往来するフェリーで一時的に輸出入される自動車は、カルネとは別に、自動車一時輸出入申告書による通関手続ができます。
- 一時輸入手続
「自動車一時輸入申告書」(税関様式C第5014号)2通に必要事項を記入し、税関に申告します。輸入が許可されると1通が輸入許可書として交付され、これは再輸出する際に必要です。 - 再輸出手続
輸入許可書を輸出申告書として提出します。輸出許可印が押されて輸出許可書として交付されます。
一時輸出は逆順になります。
カルネを利用する場合
- 一時輸入手続
日本自動車連盟(JAF)に「一時輸入書類の認証申請書」(税関様式V第1000号)を申請して認証書を取得します。この認証書とカルネを添えて、税関に申告します。JAFの認証は事前予約が必要です。稚内港から札幌事務所までは330kmと遠いので注意。 Branch offices offering Carnet de Passage authentication. - 再輸出手続
車両にカルネを添えて申告を行います。カルネの控えを輸出許可書として税関から交付を受け、これに自動車を船積みしたことの確認を受け、輸出することができます。
輸出前の準備チェックリスト
- 車両点検:オイル漏れ・ブレーキフルード・タイヤ空気圧を確認し、輸送中の液漏れリスクを低減。
- クリーニング(泥・植物種子の除去):ニュージーランド・オーストラリアなど植物検疫が厳しい国向けは特に必須。
- ガソリン抜取り:完全抜き/航空輸送→タンク換気。
- バッテリー端子絶縁:プラス側にテープを巻き、輸送中の短絡を防止。リチウムイオンの場合は UN3481 ラベル添付。発送が許可されない可能性もある。
- 可動部固定:ハンドルロック・ミラー折畳み・サイドスタンド収納(木枠内でベルト固定)。
- 付属品の取り外し:サイドケース・アクセサリーナビなどは別梱包推奨。
- 写真撮影:外装 4 面・メーター値・車台番号部を撮っておくとダメージ保険請求の証拠に。
- 書類事前チェック:
- 車検証または譲渡証明原本
- 輸出抹消仮登録証明書(抹消後)
- 本人確認書類(パスポート/免許)
- インボイス/パッキングリスト
- スペアキー管理:1 本は車両に固定、もう 1 本は書類袋へ(紛失防止)。
- 輸送保険:CIF価額ベース 0.5–0.8% で全損+損傷をカバー。
輸出手続きと必要書類(日本側)
- 輸出抹消仮登録(運輸支局)
- 通関書類作成
- インボイス/パッキングリスト
- 車台番号入り譲渡証明
- 税関輸出申告 ⇒ 輸出許可
- B/L 発行/海上保険付保
輸入国側の通関と税金
- 関税:車両価額の 0–20%
- 物品税/排気量税:排気量750 cc超で加重の国が多い
- VAT/GST:12–25%(関税等含むCIF価額ベース)
- 環境・安全基準:排ガス Euro5 等、灯火基準、ABS義務など
現地受取オプション
- CFS引取り(最安)
- Door to Door (DDP):通関/配送コミで+¥8–15万
- 空港引取り+一時ナンバー取得(欧州でのツーリング開始に便利)
よくある質問(FAQ)
Q1:排気ガス規制が心配です。
A:EU・UKは Euro5 適合が必須。日本仕様のまま適合証明が取れない場合は現地改造または入国不可となる可能性があります。
Q2:ガソリンを完全に抜く必要がありますか?
A:輸送前に完全に抜く必要があります。
Q3:輸送保険はいくら?
A:車両価額の 0.5–0.8% が目安です(全損+損傷カバー)。
Q4:バイク本体価格が安い場合は現地購入のほうが得?
A:はい。輸送・通関・保険・税金を含めると、総コストが最低でも25〜40万円かかるため、車両価格が50万円以下の場合は、現地での中古購入のほうが安く済むケースが多いです。特に欧州・北米など流通が豊富な地域では、現地の市場価格や登録手数料も含めたコストで比較されることをおすすめします。
この記事が皆様の国際バイクライフのお役に立てば幸いです。
略語・用語一覧
略語 | 語句 | 意味/日本語訳 |
LCL | Less Than Container Load | コンテナ混載便(1台から可) |
FCL | Full Container Load | コンテナ1本貸切 |
Ro‑Ro | Roll‑on/Roll‑off | 自走式フェリー型貨物船 |
CFS | Container Freight Station | コンテナ貨物集配センター |
B/L | Bill of Lading | 船荷証券(輸送契約書) |
D/O | Delivery Order | 荷渡指図書(現地での貨物引換状) |
CIF | Cost, Insurance & Freight | 貨物代+保険+運賃込み条件 |
DDP | Delivered Duty Paid | 関税・税金込ドアツードア条件 |
VAT | Value Added Tax | 付加価値税(欧州等) |
GST | Goods and Services Tax | 消費税(豪州・NZ等) |
ET S | Emissions Trading System | EU排出権取引制度(海運も対象) |
UN3481 | ― | リチウムイオン電池含有機器の国連番号 |
Euro5 | ― | 欧州排ガス規制第5次基準 |
CoC | Certificate of Conformity | 欧州型式適合証明書 |
CPD | Carnet de Passages en Douane | 国際通関手帳(一時輸入用カルネ) |
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